Special Saturday Seminar Vol.001「今日から役立つリスクマネジメント」を開催しました

2024年6月29日(土)、コワーキングスペース HiKARiBAで、Special Saturday Seminarの第1回「今日から役立つリスクマネジメント」を開催しました。講師は、一般財団法人リスクマネジメント協会の認定資格を持つリスクマネージャーでもある、株式会社ステラリンク代表取締役で、HiKARiBA代表の石川博之です。
災害や情報漏えいなどへの備えは気になっていても、何から考えればよいか迷うこともあるのではないでしょうか。今回は、リスクという言葉の意味から、自分たちの仕事や生活に潜む問題の見つけ方、対応を考える手順までを取り上げました。説明を聞くだけでなく、手元のシートに書き出す演習や、参加者とのやりとりを交えた2時間となりました。

講師の説明を聞きながら、手元の資料やPCを確認する会場の様子。
第5土曜日に、専門テーマを身近な学びへ
Special Saturday Seminarは、年間でも数回しかない「第5土曜日」に開く特別セミナーです。普段はなかなか触れる機会のない専門テーマを、少し掘り下げて学ぶ場として始まりました。その初回に取り上げたのが、リスクマネジメントです。
冒頭では、リスクマネジメントという言葉を聞いたことがあるか、BCPの策定に関わったことがあるかなど、講師から会場への問いかけがありました。今回目指したのは、計画の策定をすべて終えることではなく、仕事や生活の中で注意したい点を見つけ、その扱い方を考えるための基礎に触れることです。
導入で紹介されたのは、東日本大震災時の幼稚園の対応や、熊本豪雨で被災した高齢者施設、ランサムウェアによって電子カルテが使えなくなった病院の事例でした。災害時の避難だけでなく、情報システムの停止も、サービスや事業の継続に関わる問題として扱われました。
計画やマニュアルがあっても、現場に共有されていなければ行動につながりません。また、予定していた職員が集まれない状況も考える必要があります。こうした事例を入り口に、「何を守るために、日頃から何をしておくか」という視点へ話が進みました。
「リスク」を知り、起こる前の対応を考える
基礎となる言葉の説明では、ライオンのイラストが使われました。ライオンそのものが持つ危険性・有害性が「ハザード」で、人が近づくことで損失を受ける可能性や状態が生じる、という説明です。危険なものがあることと、それによって自分たちにどんな影響が及ぶかを分けて考える例でした。
講義では、損失を及ぼす可能性や状態としての「リスク」と、すでに発生した緊急事態や危機である「クライシス」も区別しました。問題が起きた後の対処とともに、その前にできる対応を考えることが、リスクマネジメントの重要な部分になります。
スクリーンには、事前対応、リスク事象の発生、緊急時対応、事後対応・復旧という流れが示されました。被害は建物や設備の損傷だけでなく、信用の低下、取引の停止、売上の減少、復旧費用の支出などにも広がります。何が起こるかに加え、その先にどんな影響が続くかを考える説明でした。

問題が起きた後の対応と、その前からできる備えを図で確認しました。
BCP(事業継続計画)は、重要な業務を中断させないこと、また中断しても早期に復旧することを目指す計画として紹介されました。さらに、その策定だけでなく運用・見直し・改善までを管理するBCM(事業継続管理)にも触れ、計画を実際に使い続けるための視点を確認しました。
自分の仕事や生活にあるリスクを書き出す
中盤には、参加者が自分の身の回りのリスクを書き出す時間を設けました。まず取り組んだのは、リスクを特定し、分析し、評価する「リスクアセスメント」の最初の段階です。
講師からは、自分の経験、他の組織で起きた出来事についての知識、まだ経験していないことへの想像を手がかりにする方法が示されました。いきなり項目を挙げるのが難しいときには、内部と外部、業務の流れ、部署や分野といった視点に分けて考えていきます。
例えば、設備の故障や人材の確保、為替の変動、地震などでは、問題が生じる場所も対応の仕方も異なります。講義では、ハラスメントや従業員の心身の健康にも触れ、災害以外にも目を向けていました。
書き出した内容は他の人に見せなくてよい、という案内もありました。自社の課題を書いたものを共有すること自体が、情報の扱いに関わるためです。参加者はそれぞれの立場で考えながら、手元のシートに取り組みました。
休憩中には、学校で使うタブレットや情報セキュリティにも話題が広がりました。講師は、IDの管理や写真・動画の扱い、教材へアクセスできなくなる状況などを例に挙げました。企業経営の話として始まったリスクの考え方が、学習や学校生活にもつながる場面でした。
後半は、挙げた項目を「何が起き、その結果どうなるか」というシナリオにする段階へ。火災で設備が損傷して生産が止まる、情報の誤送信で顧客からの信用が低下するといった例をもとに、現実に起こりうる最悪の状況を考え、書き足していきました。
さらに、一つひとつのリスクを「発生可能性」と「影響度」の二つの軸で整理しました。今回は5段階のリスクマップを使い、書き出した項目を置いてみるよう促されました。発生の頻度に加え、復旧までの期間や損失額など、影響を評価する基準も紹介されました。実際の業務で使う際には、基準を具体的に決める必要があるという補足もありました。
対策を選び、組織の行動につなげる
整理したリスクへの対応として紹介されたのは、「回避」「低減」「移転」「受容・保有」の四つです。危険な状況を避ける、発生可能性や影響を小さくする、保険などを通じて影響を他者に移す、影響を受け入れて備えるという考え方を、具体例とともに確認しました。
設備の固定や建物の耐震補強、避難訓練などは、被害を小さくするための例として挙げられました。すべてに同じ対策をするのではなく、起こりやすさや影響の大きさ、かけられる費用を踏まえ、方法を組み合わせていくという説明でした。

リスクマップで整理した内容を、対応の方針へつなげていきます。
終盤には、東日本大震災時のオイルプラントナトリの対応が、BCPの事例として紹介されました。講師が会場に投げかけたのは、事業を早く再開するために何を守るかという問いです。安全を確保したうえで回収用の車両を避難させたことや、同業他社との関係を日頃から築いていたことを通じ、代わりが利くものと、自分たちで確保する必要があるものを見極める視点が示されました。
質疑では、組織内での役割分担や体制づくりが話題になりました。講師は、現場から課題を挙げるだけでも、トップが指示するだけでも進めにくく、現場の気づきと経営層の意思決定の両方が必要だと説明しました。リスクを身近に感じる現場と、判断できる立場の人が関わる体制についてのやりとりでした。
計画をつくった先に、日々の共有と見直しを
最後に確認したのは、リスクマネジメントを組織の仕事として続けることです。規程や計画の整備に加え、定期的な見直し、教育や訓練を通じて、何を大切にし、どう動くかを共有していく。導入で扱ったマニュアルの課題が、終盤の実践や体制づくりの話につながりました。

講義と演習、やりとりを交えて開催した初回のSpecial Saturday Seminar。
今回のセミナーでは、言葉の意味を知るところから、自分の身の回りの問題を書き出し、優先順位や対策を考えるところまでを取り上げました。まずは、気になっていることを一度書き出してみる。そのための考え方と手順を紹介する回となりました。
ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました。HiKARiBAでは今後も、第5土曜日のSpecial Saturday Seminarを通じて、普段の仕事や暮らしを少し違う角度から考える学びの時間をお届けしていきます。
2026年10月17日 08時00分 2026年10月17日 08時00分
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